12/05: キャッシュフロー番外編その1「八百屋の吊りかご」
皆さん、さあ童心に帰って“お買い物ごっこ”を思い出してください。
お金を手に握りしめて(多分財布なんて持ってないから)、いろいろなお店に買い物に行きます。主食の“ごはん”があれば、「八百屋」、「魚屋」、「肉屋」などで“おかず”をゲット。
でも、女の子は「花屋さん」か「ケーキ屋さん」の方へ足を運びそうですね。
そこで注目していただきたいのは、「八百屋」です。
と言っても“きゅうり”や“なす”や“トマト”じゃなくて、昔の「八百屋」に必ずといっていいほど「吊されていた釣り銭用のかご」のことです。そう、あの頃はレジなんか使ってませんでしたからね。
まるで映画の『ALWAYS 三丁目の夕日』のシーンみたいでしょ。
この「吊りかご」は非常に便利だったんですよ。
ある「八百屋」の店先では、こんなやり取りが・・・。
店主「へい、らっしぁ~い。奥さん今日は何にいたしやす」
主婦「そうねえ。そこのほうれん草を2わ頂戴」
店主「へえ。30万両いただきやす」(ほうれん草を手渡す)
主婦「分かったわ。30円ね。それじゃ100円でお釣りね」
店主「へえ。70万両のお返し。ありがとうごぜいやす」
ちゃりん、ちゃりんと硬貨の音が聞こえてきそうですね。もしかしたら、その主婦が“板垣退助”の“100円札”を使ったかもしれませんよ(ちょっと話が古かったですね)。
さあ、ノスタルジックな話はこの辺にしておいて、ここで本題に入りましょう。
もちろん“キャッシュフロー”のことです。
先ほどの「八百屋」店主は、主婦から頂いた100円を「吊りかご」に入れ、そこから70円を取り出し、その主婦に“お釣り”として渡しました。
この場合、売上代金の30円のみがキャッシュ・イン(実際のお金のやり取りは、100円札の受取りとお釣り70円のお返し)です。
この「吊りかご」の中の状態を時間順に見てみましょう。最も簡単なケースを設定します。
今日「八百屋」を店開きした時は、商品は「ほうれんそう2わ」だけで、「吊りかご」の中に70円入っていました。そして商売は先ほどの奥さんに、そのほうれん草2わを30円(原価25円)で売っただけで店終いです。
さて、ここで今日1日の決算をします。
でも、財産はお金と商品だけとしてください(店も吊りかごも奥さんの実家からの借り物で、期首在庫以外の財産は一切ありません)。
ここで、まず期首(今回は開店前)の決算書を作成してみましょう。
<開店前の決算書>
①貸借対照表:現金70円+商品25円=元入金95円
これに、さっきの店先での取引を加えて今日の決算書を作成すると、以下のようになります。
<今日の決算書>
①貸借対照表:現金100円=元入金100円
②損益計算書:売上高30円-売上原価25円=売上総利益5円
③キャッシュフロー計算書:営業収入30円-営業支出0円=営業キャッシュフロー30円
現金期首残高70円+現金増加額30円=現金期末残高100円
はい、どうですか。買い物をした主婦が100円札(紙幣)を渡して、店主からおつり70円(硬貨)をもらったのだから、実際のお金のやり取りは、主婦→店主 100円、店主→主婦 70円となっています。
でも、もしこの主婦が売上代金の30円を硬貨で支払っていたら、主婦→店主 30円という流れだけで終わりですよね。
と言うことは、その前の取引(100円札の収入)は、この取引(30円硬貨の収入)の後、店主の吊りかごの中にある硬貨100円(70円+30円)を主婦の100円札と両替したことと同じ結果になります。
ですから、損益計算書の売上高やキャッシュフロー計算書の営業収入は、あくまで“本当の収入”である30円であることに注意してください。
ここで言えるのは、売上高と営業収入がイコールだということです。
ところが、もしこの主婦が「代金はツケにしといてね」という調子で「売掛金」が発生していれば、売上高30円(発生主義)、営業収入0円(現金主義)ということで、両者は必ずしも一致しなくなります。
ちょっと話がややっこしくなってきましたが、ここで元に戻して江戸っ子らしく“現金商売”で進めていきましょう。
次に似ていて非なるもの、「費用」と「支出」について説明しましょう。
「費用」とは、売上原価や販売管理費など一般に経費と言われるもので「財やサービスを費消したときの発生額」のことです。
これに対し「支出」とは、「金銭の流出」すなわちキャッシュ・アウト(フロー)のことを言います。
これらのことを、先の取引に当てはめて解説します。
上記の②は、損益計算書の売上原価25円が原価(費用)として発生したことを表しています。
このことを簿記会計では、(借方)売上原価25(貸方)商品25と仕訳するのです。
ところが③のキャッシュフロー計算書では、営業支出は0円、すなわち今日商品を仕入れた訳ではないので、今日のお金は出ていってません(もちろん先のおつりのやり取りは単なる両替と考えられるので関係ありません)。
ですから、ここでの売上原価(発生主義)と営業支出(現金主義)は一致していません。
③について、これを間接法で表示すると、キャッシュフロー計算書は次のようになります。
③’キャッシュフロー計算書:当期純利益5円+商品減少額25円=営業キャッシュフロー30円
現金期首残高70円+現金増加額30円=現金期末残高100円
「八百屋」の「吊りかご」は、どんぶり勘定とも言われています。
もし、宵越しの銭を持たない店主が今日の商売を終えるやいなや、「吊りかご」から100円を持ち出して遊びに行ってしまえば、たちまち今日の決算書は次のように書き替えられてしまいます。
<改訂した決算書>
①貸借対照表:現金0円=元入金0円
②損益計算書:売上高30円-売上原価25円=売上総利益5円
③キャッシュフロー計算書:営業収入30円-営業支出0円=営業キャッシュフロー30円、投資キャッシュフロー△100円(家事費の引き出し)
現金期首残高70円+現金増加額△70円=現金期末残高0円
どうですか、皆さん。②以外が違うでしょ。
そう、①はキャッシュがなくなっていることを示しています。残高一文無しです。
③は家事費(多分、遊興費)として引き出し、投資キャッシュフローが△100円の増加、すなわち営業キャッシュフロー30円と合わせてキャッシュフローは△70円となります。これは現金70円の減少を示しています。ですから、キャッシュフロー計算書でも現金期末残高は0円となり、貸借対照表の現金期末残高と一致します。
ちなみに②で利益が5円出ていても、実際にお金が残らない状態を「勘定合って銭足らず」と言います。
これで皆さんが、決算書とキャッシュフローの関係について少しでも分かっていただけたなら、「八百屋」の「吊りかご」に感謝します。
お金を手に握りしめて(多分財布なんて持ってないから)、いろいろなお店に買い物に行きます。主食の“ごはん”があれば、「八百屋」、「魚屋」、「肉屋」などで“おかず”をゲット。
でも、女の子は「花屋さん」か「ケーキ屋さん」の方へ足を運びそうですね。
そこで注目していただきたいのは、「八百屋」です。
と言っても“きゅうり”や“なす”や“トマト”じゃなくて、昔の「八百屋」に必ずといっていいほど「吊されていた釣り銭用のかご」のことです。そう、あの頃はレジなんか使ってませんでしたからね。
まるで映画の『ALWAYS 三丁目の夕日』のシーンみたいでしょ。
この「吊りかご」は非常に便利だったんですよ。
ある「八百屋」の店先では、こんなやり取りが・・・。
店主「へい、らっしぁ~い。奥さん今日は何にいたしやす」
主婦「そうねえ。そこのほうれん草を2わ頂戴」
店主「へえ。30万両いただきやす」(ほうれん草を手渡す)
主婦「分かったわ。30円ね。それじゃ100円でお釣りね」
店主「へえ。70万両のお返し。ありがとうごぜいやす」
ちゃりん、ちゃりんと硬貨の音が聞こえてきそうですね。もしかしたら、その主婦が“板垣退助”の“100円札”を使ったかもしれませんよ(ちょっと話が古かったですね)。
さあ、ノスタルジックな話はこの辺にしておいて、ここで本題に入りましょう。
もちろん“キャッシュフロー”のことです。
先ほどの「八百屋」店主は、主婦から頂いた100円を「吊りかご」に入れ、そこから70円を取り出し、その主婦に“お釣り”として渡しました。
この場合、売上代金の30円のみがキャッシュ・イン(実際のお金のやり取りは、100円札の受取りとお釣り70円のお返し)です。
この「吊りかご」の中の状態を時間順に見てみましょう。最も簡単なケースを設定します。
今日「八百屋」を店開きした時は、商品は「ほうれんそう2わ」だけで、「吊りかご」の中に70円入っていました。そして商売は先ほどの奥さんに、そのほうれん草2わを30円(原価25円)で売っただけで店終いです。
さて、ここで今日1日の決算をします。
でも、財産はお金と商品だけとしてください(店も吊りかごも奥さんの実家からの借り物で、期首在庫以外の財産は一切ありません)。
ここで、まず期首(今回は開店前)の決算書を作成してみましょう。
<開店前の決算書>
①貸借対照表:現金70円+商品25円=元入金95円
これに、さっきの店先での取引を加えて今日の決算書を作成すると、以下のようになります。
<今日の決算書>
①貸借対照表:現金100円=元入金100円
②損益計算書:売上高30円-売上原価25円=売上総利益5円
③キャッシュフロー計算書:営業収入30円-営業支出0円=営業キャッシュフロー30円
現金期首残高70円+現金増加額30円=現金期末残高100円
はい、どうですか。買い物をした主婦が100円札(紙幣)を渡して、店主からおつり70円(硬貨)をもらったのだから、実際のお金のやり取りは、主婦→店主 100円、店主→主婦 70円となっています。
でも、もしこの主婦が売上代金の30円を硬貨で支払っていたら、主婦→店主 30円という流れだけで終わりですよね。
と言うことは、その前の取引(100円札の収入)は、この取引(30円硬貨の収入)の後、店主の吊りかごの中にある硬貨100円(70円+30円)を主婦の100円札と両替したことと同じ結果になります。
ですから、損益計算書の売上高やキャッシュフロー計算書の営業収入は、あくまで“本当の収入”である30円であることに注意してください。
ここで言えるのは、売上高と営業収入がイコールだということです。
ところが、もしこの主婦が「代金はツケにしといてね」という調子で「売掛金」が発生していれば、売上高30円(発生主義)、営業収入0円(現金主義)ということで、両者は必ずしも一致しなくなります。
ちょっと話がややっこしくなってきましたが、ここで元に戻して江戸っ子らしく“現金商売”で進めていきましょう。
次に似ていて非なるもの、「費用」と「支出」について説明しましょう。
「費用」とは、売上原価や販売管理費など一般に経費と言われるもので「財やサービスを費消したときの発生額」のことです。
これに対し「支出」とは、「金銭の流出」すなわちキャッシュ・アウト(フロー)のことを言います。
これらのことを、先の取引に当てはめて解説します。
上記の②は、損益計算書の売上原価25円が原価(費用)として発生したことを表しています。
このことを簿記会計では、(借方)売上原価25(貸方)商品25と仕訳するのです。
ところが③のキャッシュフロー計算書では、営業支出は0円、すなわち今日商品を仕入れた訳ではないので、今日のお金は出ていってません(もちろん先のおつりのやり取りは単なる両替と考えられるので関係ありません)。
ですから、ここでの売上原価(発生主義)と営業支出(現金主義)は一致していません。
③について、これを間接法で表示すると、キャッシュフロー計算書は次のようになります。
③’キャッシュフロー計算書:当期純利益5円+商品減少額25円=営業キャッシュフロー30円
現金期首残高70円+現金増加額30円=現金期末残高100円
「八百屋」の「吊りかご」は、どんぶり勘定とも言われています。
もし、宵越しの銭を持たない店主が今日の商売を終えるやいなや、「吊りかご」から100円を持ち出して遊びに行ってしまえば、たちまち今日の決算書は次のように書き替えられてしまいます。
<改訂した決算書>
①貸借対照表:現金0円=元入金0円
②損益計算書:売上高30円-売上原価25円=売上総利益5円
③キャッシュフロー計算書:営業収入30円-営業支出0円=営業キャッシュフロー30円、投資キャッシュフロー△100円(家事費の引き出し)
現金期首残高70円+現金増加額△70円=現金期末残高0円
どうですか、皆さん。②以外が違うでしょ。
そう、①はキャッシュがなくなっていることを示しています。残高一文無しです。
③は家事費(多分、遊興費)として引き出し、投資キャッシュフローが△100円の増加、すなわち営業キャッシュフロー30円と合わせてキャッシュフローは△70円となります。これは現金70円の減少を示しています。ですから、キャッシュフロー計算書でも現金期末残高は0円となり、貸借対照表の現金期末残高と一致します。
ちなみに②で利益が5円出ていても、実際にお金が残らない状態を「勘定合って銭足らず」と言います。
これで皆さんが、決算書とキャッシュフローの関係について少しでも分かっていただけたなら、「八百屋」の「吊りかご」に感謝します。
この記事の評価:★★ 評価する


cazuさんのコメント:
というかまず釣り銭かごがものすごく懐かしいです。
小学生時代に八百屋さんの釣り銭かごってどうしてあんなにのびるんだろうとか、なんでこぼれないんだろうとかそっちのほうばかり気にしていた事を思い出します。
キャッシュフローもそうやって考えるとそんなに難しいものではないのですね。
ものすごくわかりやすいです。